コラム

カーブサイドピックアップとは?
注目される背景や導入メリットを解説!

カーブサイドピックアップとは

新型コロナウイルスの流行を契機にオンラインショッピングと宅配サービスの利用が今まで以上に一般化し、小売業界の顧客接点は大きく見直されました。そのような中で、ECサイトを利用して商品を購入し、最寄りの店舗にある駐車場で車を降りずに商品を受け取る「カーブサイドピックアップ」に取り組む企業が増えてきています。

この記事では、ECサイトの運営担当者や小売店舗の販売責任者の方に向けて、カーブサイドピックアップが注目される背景や導入メリットを解説します。カーブサイドピックアップの導入方法や事例も掲載しているため、ぜひお役立てください。

1.カーブサイドピックアップとは

カーブサイドピックアップ(Curbside Pickup)とは、オンラインで事前に注文した商品を店舗の駐車場で受け取れるサービスです。「Curbside」という英語は「道路の縁石」という意味で、道に停車した車で受け取るという仕組みからカーブサイドピックアップと呼ばれるようになりました。

利用者は商品の注文後、指定時間に店舗の駐車場に車を停めて連絡します。スタッフが商品を車に積み込むため、顧客は車から降りる必要がありません。

アメリカ大手のディスカウントショップとして知られるウォルマートやターゲットは、カーブサイドピックアップのサービスを導入して売り上げを伸ばしました。カーブサイドピックアップは日本企業でも導入されはじめ、注目を集めています。

1-1.カーブサイドピックアップの仕組み

一般的なカーブサイドピックアップの仕組みは、以下の通りです。

一般的なカーブサイドピックアップの仕組み

1.ECサイトやアプリから注文する

利用者は専用アプリやECストアを使ってオンラインで商品を注文し、決済画面でカーブサイドピックアップを行う店舗を選び、受け取り時間を指定します。

2.店舗スタッフが商品を準備する

ソフトウェアによって店舗のスタッフに注文内容が通知され、スタッフは顧客の到着に向けて商品を準備します。

3.店舗の駐車場で利用者が商品を受け取る

店舗の駐車場に着いたタイミングで利用者がアプリ内の到着を知らせるボタンをタップしたり電話で連絡したりすると、スタッフが注文商品を車まで持って来ます。利用者がアプリで表示したバーコードをスタッフがスキャンすれば、商品の受け取りが完了となります。

なお、カーブサイドピックアップでは注文商品の保管期間として、企業ごとに異なる期間が設定されています。保管期間内に顧客が商品を受け取りに来ない場合、注文は自動的にキャンセルされるのが一般的です。

1-2.カーブサイドピックアップとBOPISの違い

カーブサイドピックアップはBOPIS(Buy Online Pick-up In Store)の形態の1つです。さらにBOPISは、クリック&コレクトというショッピングスタイルに含まれます。

【カーブサイドピックアップ・BOPIS・クリック&コレクトの関係】

【カーブサイドピックアップ・BOPIS・クリック&コレクトの関係】

クリック&コレクトは、オンライン注文した商品を自宅以外で受け取るショッピングスタイルや仕組みのすべてを指します。BOPISはクリック&コレクトの1つで、オンラインで購入して店舗内で受け取るショッピングスタイルです。

カーブサイドピックアップもBOPISと同様に商品を店舗受け取りにする仕組みですが、BOPISとは異なり店舗内には入りません。カーブサイドピックアップの利用者は、車中で商品を受け取ります。

2.カーブサイドピックアップ・BOPISが注目されている背景

カーブサイドピックアップやBOPISといったクリック&コレクトのショッピングスタイルが注目されるようになった理由には、以下の3つが挙げられます。

・新型コロナウイルスによる影響

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、消費者は感染対策のために外出を極力避けるようになりました。カーブサイドピックアップやBOPISであればオンラインで商品を購入し、接触は受け取りのタイミングに限られます。そのため、コロナ禍のような大規模な感染症の流行が起きた場合に適したショッピングスタイルとして注目されるようになりました。

・OMOの普及

カーブサイドピックアップやBOPISは、OMO施策の1つです。OMOとは、オンラインとリアル店舗でのショッピングの境界線をなくそうとするマーケティング戦略の用語です。商品を欲しいと感じても購入には至らないケースは少なくありません。しかし、OMOでは購買意欲が高まったときに即座に購入できるため、販売機会の損失を防げます。

・配送業者の負担軽減

オンラインと実店舗のつながりが重要であるとの認識が普及したことにより、クリック&コレクトのショッピングスタイルが注目を集めました。ECの活況により、配送業者には大きな負担がかかっています。特に再配達をはじめとした不要な配達の軽減は、配送業者にとって深刻な課題です。カーブサイドピックアップやBOPISでは消費者が商品を自分で受け取りに行くため、配達のコストをかけることなく確実に商品を渡せます。配送業者の負担を軽減するアプローチとしても、クリック&コレクトのショッピングスタイルは注目されています。

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3.カーブサイドピックアップの顧客側のメリット

カーブサイドピックアップを導入することは、店舗を利用する顧客にとって多くのメリットがあります。ここでは、カーブサイドピックアップの顧客側のメリットを紹介します。

3-1.品切れにならず商品を探す必要もない

カーブサイドピックアップでは事前に在庫をチェックできるため、店舗に足を運んだときに商品在庫が切れていることがありません。店舗に欲しい商品の在庫がなく、取り寄せられるまで待ち、再び足を運ぶという手間がなく、必要な商品を確実に入手できるのがメリットです。

また、カーブサイドピックアップの場合、購入済みの商品をスタッフが車両まで届けてくれ、車から降りる必要がないため、顧客は短時間で買い物ができます。レジ待ちの必要もなく、効率よく買い物ができます。

3-2.接触を避けられる

カーブサイドピックアップには車内から商品を受け取る手軽さだけでなく、ほかの顧客との直接的な接触を避けられるメリットがあります。車に乗ったままで商品の受け取りができるため、たとえ店内が混雑していてもほかの顧客と接触することはありません。顧客は店舗に入る必要がなく、店舗内の滞在時間はゼロです。

人との接触を最小限にできるカーブサイドピックアップは、感染症対策が必要な状況下で安心できるショッピングスタイルと言えるでしょう。

3-3.好きな時間に商品を受け取れる

カーブサイドピックアップは自分の好きな時間に商品を受け取れ、配送時間まで自宅で待機する必要がありません。

ECサイトで商品を購入すると、配送日は商品が届くまで自宅で待つ必要があります。配送日時指定ができるとはいえ、予定を調整したり時間を確保したりすることをデメリットに感じる方もいるでしょう。また、置き配を利用する場合でも、生ものなど一部の置き配ができない商品は再配送になるケースがあります。

便利かつ自由に買い物ができるカーブサイドピックアップは、忙しい顧客にとって大きなメリットとなります。

3-4.配送料がかからない

カーブサイドピックアップを実施している店舗で商品を受け取れば、配送料の負担なく好きな店舗での受け取りが可能です。

一般的に、ECサイトで商品を購入した際には、商品代金とは別に配送料の負担がかかります。一定金額より多く商品を購入したり、特定の商品を購入したりすることで、配送料が無料になるサービスを実施しているショップも中には存在します。しかし、欲しい商品が1品のみの場合は、配送料が無料になるサービスを利用しにくいという方は多いでしょう。

カーブサイドピックアップを利用すれば、1品単位の買い物や少額の買い物でも配送料なしで購入できるため、気軽に欲しい商品を手に入れられます。

4.カーブサイドピックアップの店舗側の導入メリット

カーブサイドピックアップを店舗が導入すると、顧客にとってメリットがあるだけでなく、店舗側もさまざまなメリットが得られます。店舗側がカーブサイドピックアップを導入するメリットの中でも、代表的な4点について詳しく解説します。

4-1.顧客との接点を作れる

カーブサイドピックアップは、主にECサイトを利用しており、店舗を普段利用しない顧客との接点を得る手段となります。

ECサイト事業者にとって、顧客と直接コミュニケーションを取るのはハードルの高い課題です。直接的な交流が難しい要因は、EC事業の性質上、購入から商品受け取りまでが自宅で完結してしまうことにあります。

カーブサイドピックアップを導入した場合、商品を受け取りに来た顧客に対して、商品の特徴や魅力をアピールすることが可能です。また、サンプル提供やクーポン券の発行など、次回の購入を促進する施策を考えることもできます。

ECサイトだけでは訴求できなかったポイントを直接伝えることで、リピーターやロイヤルカスタマーの獲得につながるでしょう。

4-2.コストを軽減できる

宅配と比較して物流コストを削減できる点も、カーブサイドピックアップの導入メリットとして挙げられます。

カーブサイドピックアップを活用した場合、商品を顧客の自宅へ配送することが減り、各配送先への送料や梱包・発送に関連する経費を抑えられます。物流にともなうコストの軽減を期待できるでしょう。

また、顧客が注文した商品を都度取り寄せるのではなく、ECサイトやアプリで注文されたものを一括配送すれば、配送コストを削減できます。

4-3.他社との差別化につながる

カーブサイドピックアップやBOPISを導入する企業は増加傾向にあるとはいえ、日本ではまだ少ないのが現状です。そのため、先行して導入した企業は他社との差別化を実現できます。

もし他社と同じ商品を扱っている場合でも、カーブサイドピックアップやBOPISに対応できる店舗は顧客から「商品受け取りの選択肢が広い店舗」と認識されます。顧客の支持を得やすくなり、未導入の競合他社の顧客を引き込む効果も期待できるでしょう。

また、BOPISの導入のみにとどまらず、店舗に顧客が足を運んだ際の販売サービスにおいても独自の工夫を凝らすことをおすすめします。来店時の対応に独自性を出せれば、他社との差別化を一段と際立たせることが可能です。

カーブサイドピックアップなどのBOPISを取り入れることを検討している場合は、できるだけ早期に導入するとよいでしょう。

4-4.顧客満足度を向上できる

店舗がカーブサイドピックアップやBOPISに対応している場合、以下のような顧客のニーズに応えることが可能です。

・通勤などのついでに商品を素早く受け取りたい

・商品を探したりレジ待ちしたりする時間がもったいない

・商品受け取りのために待ち時間をかけたくない

・配送料をかけずに商品を手に入れたい

・確実に商品を手に入れたい

また、店舗で商品を受け取るときにスタッフとやり取りするタイミングがあるため、商品の使い方や詳しい情報などを顧客に伝えられ、顧客満足度向上につながります。万一商品に問題があればその場で簡単に返品できる点も、顧客が安心してオンラインショッピングを楽しめるポイントです。

5.カーブサイドピックアップを導入する方法

カーブサイドピックアップを店舗に導入するには、前提としてECサイトと実店舗の2つのチャネルが必要になります。その上で、カーブサイドピックアップを店舗に導入する際に押さえておきたいポイントを3つ解説します。

5-1.顧客満足度を向上できる

カーブサイドピックアップの導入には、各店舗の在庫がどの程度残っているかをリアルタイムでチェックできる受発注管理システムが必要です。

カーブサイドピックアップの利点は、顧客が商品をスムーズに受け取れることにあります。

事前注文した商品の在庫がなく、わざわざ店舗に足を運んだにもかかわらず受け取れなかったという事態は避けたいところです。正確な店舗在庫数を提示できれば、顧客からの信頼につながります。受発注管理システムを活用し、注文に応じた在庫の引き落としや商品の取り置きを実現できる仕組みを整えるとよいでしょう。

また、いつ商品受け取りが可能になるか、何時までに注文すれば当日受け取り可能かが分かると、顧客の利便性がさらに高まります。

在庫管理などのデータ活用については以下で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

5-2.受け渡しをスムーズにできるスタッフの育成

店頭に来たお客様にスムーズに商品を受け渡せるよう、スタッフを育成することもポイントです。

一般的に、カーブサイドピックアップのショッピングスタイルはスタッフの負担を増やします。通常は顧客が行う、商品を探して袋へ詰め替え、店舗から駐車場まで運搬する作業を、カーブサイドピックアップでは店舗のスタッフがすべて代行します。

顧客の期待通りに注文商品を準備することは、カーブサイドピックアップの成功に欠かせません。また店舗駐車場に顧客が到着した際には、商品を車まで迅速に届けることが求められます。

カーブサイドピックアップに必要な対応を確実に行えるよう、店舗スタッフ向けの教育に力を入れることをおすすめします。

5-3.データドリブンマーケティング

カーブサイドピックアップの顧客体験を向上させるには、蓄積した顧客データを戦略的に活用するデータドリブンマーケティングが必要です。

また、カーブサイドピックアップでは、ECサイトの購入タイミングだけでなく、受け取りに関するデータも蓄積されます。いつ顧客が取りに来るのか、顧客は受け取りにどの店舗を利用しているのかなどの情報を活用すれば、効果的なマーケティング戦略を構築できるでしょう。

6.カーブサイドピックアップの成功事例

国内の企業におけるカーブサイドピックアップの導入事例を3つ紹介します。

日本マクドナルド

2020年5月、日本マクドナルドは、スマートフォンの公式アプリを介して商品を店舗の駐車場で受け取れるサービス「パーク&ゴー」を導入しました。利用者はアプリ「モバイルオーダー」を利用し、商品を注文・決済します。注文時には「駐車場で受け取る」を受け取り方法として選び、支払い方法を設定して注文を確定させます。店舗に到着したらパーク&ゴーの専用スペースに車を停め、駐車スペースの番号をアプリに入力すると決済は完了です。スタッフができたての商品を車まで届けます。通常のドライブスルーに並ぶ手間や、車から降りて店内で買い物をする手間が不要です。注文を手早くしたい場合や、子ども連れのファミリーなど車の乗り降りに手間がかかる場合に利便性が高いサービスです。

イオン

イオンのBOPISの1つである「ドライブピックアップ!」では、専用サイトの「イオンネットスーパー」から注文を行います。対象商品は豊富で、肉・魚・野菜の生鮮食品をはじめ、加工食品や冷凍食品、飲料や日用品、ベビー用品などがそろっています。惣菜や弁当の購入も可能ですが、値下げシールが貼られている商品は対象外です。指定した時間に店舗の商品ピックアップ用の場所に車で到着すると、店舗のスタッフが商品を袋に詰めて車まで運んでくれます。支払いは注文時に済ませているため、商品受け取りサインをすればショッピングは完了です。

ヤマダ電機

ヤマダ電機ではDX推進の一環として、「Tecc LIFE SELECT尼崎店」をはじめとした数店舗でカーブサイドピックアップの受け取りサービスを導入しています。サービスの利用にはECサイトの「ヤマダウェブコム」を使用します。注文の際に「おみせde受取り・カーブサイドピックアップ(車内受け取り)」を選択すれば、店舗敷地内の指定駐車場で商品を受け取ることが可能です。該当店舗に来店したら専用駐車場に停車し、付近に設置されているインターフォンを鳴らして店内に知らせます。注文した商品をスタッフが運んで来るまで利用者は車に乗っていればよいため、ライフスタイルに合わせたショッピングが実現できるでしょう。

7.まとめ

オンラインで注文した商品を駐車場で受け取れるカーブサイドピックアップは、利用者にとっては利便性が高く、店舗にとっては多くのメリットがあるサービスです。カーブサイドピックアップの導入には、ECサイトと店舗の各チャネル、およびリアルタイムの在庫管理システムやスタッフ育成が必要です。こうした仕組みの導入を検討されているならaltcircleのエンタープライズECサービスをぜひご利用ください。

また、ECサイトやカーブサイドピックアップ、BOPISで得たデータを活用したいなら、altcircleのデータ分析サービス「ichimo」およびデータドリブンマーケティングサービス「data circle」をぜひご利用ください。顧客データ、店舗とECサイトの購買データ、Web上の活動履歴からデータ分析を行い、施策から収益につながるまで伴走します。

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