AIを活用してDXを成功させる方法とは?
独自調査・事例と始める5つのステップを解説!

AIを活用してDXを成功させる方法とは

DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する上で、AIは有効な手段の1つです。しかし、「DX=AI導入」と捉えてしまうと、期待した成果が得られない場合があります。

DXを成功させるには、実現したい目的を明確にした上で、AIを活用する業務や導入方法を検討することが重要です。また、人材やデータ、社内ルールを整備し、情報漏えいや誤回答などのリスクにも備える必要があります。

この記事では、DXとAIの関係性や企業の成功事例、導入時の課題、AI活用を始めるためのステップを解説します。顧客接点におけるAI活用について実施した独自調査の結果も紹介するため、DX推進の参考にしてください。

1.DXとAIの関係性とは?

DXとAIは密接に関係していますが、同じものではありません。DXはデータやデジタル技術を活用して企業や事業を変革する取り組みであり、AIはその実現を支える手段の1つです。ここでは、DXとAIの意味をそれぞれ確認した上で、両者の関係性を解説します。

1-1.DXとは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、データとデジタル技術を活用して、製品・サービスやビジネスモデル、業務プロセス、組織文化などを変革し、企業の競争力を高める取り組みです。

経済産業省は、DXを次のように定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

DXは、単にデジタルツールを導入したり、既存業務を効率化したりすることではありません。デジタル技術の活用を通じて、顧客への提供価値や企業の仕組みそのものを変革することが重要です。

1-2.AIとは?

AI(人工知能)は、機械学習などを用いて、予測・判断・生成などを行う技術やシステムを広く指します。総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」では、「AIシステム」自体または機械学習をするソフトウェア・プログラムを含む抽象的な概念として扱われています。

企業におけるAI活用は、生成AIによる文章作成や情報検索・要約といった個人の業務支援から、AIエージェントが企業内のデータやシステムと連携し、複数のタスクや業務プロセスを実行する段階へと広がっています。

そのため、DXにおけるAI活用では、個別の業務をAIで効率化するだけでなく、AIを既存システムやデータ、業務プロセスに組み込み、人とAIの役割分担も含めて業務そのものを再設計する視点が重要です。AIを「導入する」ことから、AIを前提に業務や顧客体験を「どう変えるか」へと、企業に求められる検討も変化しています。

1-3.DXは目的、AIは実現するための手段

企業や組織の目的は、事業成長や競争力の強化といった成果を生み出すことにあります。DXは、その目的を達成するために業務やビジネスモデルを変革する一連の取り組みであり、AIはDXを推進・実行するための数ある手段の1つです。

DXは、業務プロセスや顧客体験、ビジネスモデル全体を見直す取り組みであるのに対し、AIはデータ分析や予測、自動化、コンテンツ生成などを担う技術です。両者は同列ではなく、DXという取り組みの中でAIが役割を果たす関係にあります。

ただし、AIはDXを実現するための万能な解決策ではありません。IoTやクラウド、5Gなどのデジタル技術と同様に、適した業務や課題に活用してこそ効果を発揮します。特にAIは、人手では処理が難しい大量のデータを分析したり、予測や判断を支援したりする用途に有効です。

DX推進では「AIありき」ではなく、変革したい目的を明確にした上で、手段としてAIを位置付けることが大切です。

1-4.企業におけるDXとAI活用の関係

DXに取り組む企業は、実際にAIをどのように位置付けているのでしょうか。IPAの「DX動向2026」では、DXに取り組む企業を対象に、AI活用とDX推進の関係を調査しています。

AIの利活用のDX推進に対する位置付け

IPA「DX動向2026」の調査では、DXに取り組み、かつ生成AIを含むAIに取り組んでいる企業のうち、「DX推進のためAIを中心に活用している」が9.3%、「DX推進の一部としてAIを活用している」が45.1%でした。両者を合わせた54.4%が、AIをDX推進の中心または一部として位置付けています。

DXとAIは同じものではありませんが、AIがDXを推進する手段の1つとして活用されていることがわかります。

AIは、業務効率化やデータ分析にとどまらず、WebサイトやEC、店舗、問い合わせ対応など、顧客接点においても活用が広がっています。

その一例として、EC領域における「売上を最大化するAI活用」について、以下の動画で解説しています。

AIは、業務効率化やデータ分析など、DXを推進する幅広い領域で活用されています。そのなかでも、WebサイトやEC、店舗、問い合わせ対応といった顧客接点での活用は、業務効率化だけでなく、顧客満足度や売上の向上にもつながる重要な取り組みです。

そこで次章では、顧客接点におけるAIの活用状況や期待される効果について、独自調査の結果をもとに解説します。

2.【独自調査】顧客接点におけるAI活用の実態

顧客接点におけるAI活用の実態を明らかにするため、AIの導入・試験利用・具体的な導入検討に関わる100名を対象に、インターネット調査を実施しました。ここでは、AIを活用している業務や期待する効果、向上させたい顧客体験について、調査結果をもとに解説します。

2-1.AIを活用する業務は「営業活動や顧客管理の支援」が最多の46.0%

顧客接点に関する業務のうち、AIを活用している、または具体的に活用を予定している業務について複数回答で尋ねました。

顧客接点に関する業務のうち、AIを活用している、または具体的に活用を予定している業務

「営業活動や顧客管理の支援」が46.0%で最も多く、「広告配信やマーケティング施策の最適化」が45.0%で続きました。両者の割合が特に高い一方、そのほかの業務にも一定の回答が集まっています。顧客接点において、さまざまな方法でAIが活用されている、または活用が予定されていることがわかります。

2-2.65.0%がAIによる業務時間・作業負担の削減に期待

次に、顧客接点でのAI活用によって得られている、または今後期待している効果について複数回答で尋ねました。

顧客接点に関する業務のうち、AIを活用している、または具体的に活用を予定している業務

「業務時間や作業負担の削減」が65.0%で最も多く、「顧客への対応速度の向上」が47.0%、「顧客対応品質の均一化」が34.0%で続きました。

業務効率化への期待が特に大きい一方で、対応速度や品質の向上も上位に挙がっています。顧客接点におけるAIには、担当者の負担を軽減しながら、顧客対応を改善する役割が求められていると考えられます。

2-3.AIで向上させたい顧客体験の最多は「必要な情報の見つけやすさ」で54.0%

最後にAIの活用によって、特に向上させたい顧客体験について複数回答で尋ねました。

顧客接点に関する業務のうち、AIを活用している、または具体的に活用を予定している業務

「必要な情報を簡単に見つけられること」が54.0%で最多となり、「問い合わせに迅速に対応できること」が43.0%、「顧客に合った商品や情報を提案できること」が35.0%で続きました。

調査結果から、顧客が必要な情報へ速やかにたどり着ける環境の整備が重視されていることがわかります。AIを活用する際は、高度な提案だけでなく、情報検索や問い合わせ対応といった基本的な顧客体験の改善も重要です。

独自調査から、営業支援や顧客管理、マーケティングなど、さまざまな顧客接点でAIが活用または活用予定であることがわかりました。また、業務時間や作業負担の削減に加え、顧客への対応速度や情報の見つけやすさなど、顧客対応・顧客体験の改善も重視されています。

続いて、AI活用を具体的なDX成果につなげた企業事例を紹介します。

3.AI活用によるDXの成功事例

AIはDXを実現するための有効な手段の1つであり、実際に多くの企業が業務効率化や付加価値創出につなげています。特に近年は、生成AIや需要予測AIの進化により、現場業務の支援からマーケティング、サプライチェーンまで活用範囲が広がっています。

ここでは、店舗運営、接客、広告、物流といった分野でAIを活用し、DXを前進させている企業の具体的な成功事例を紹介します。

ECサイトや不動産業界でのAI活用方法については以下でも解説しています。

3-1.AIアシスタントの導入による店舗運営の効率化(ファミリーマート)

株式会社ファミリーマートでは、人型AIアシスタントを活用し、店長業務の効率化と店舗運営力の向上を実現しています。2024年7月末時点で約7,000店舗に導入されている人型AIアシスタントは、店長が必要とする売場づくりや業務対応の情報を即座に提供する仕組みです。

2024年7月からは生成AIを搭載し、業務マニュアルを音声で検索できるようになりました。レジ操作やスタッフ育成、緊急時対応などを即時に確認できるため、問い合わせや確認作業の負担が軽減されています。さらに、過去の割引施策やクーポン企画の販売実績もAIで参照可能となり、データに基づく売場づくりや販売計画が可能になりました。

この事例から、生成AIを現場で活用するには、業務マニュアルや販売実績などの社内データへ必要なときにアクセスできる仕組みが重要だとわかります。

3-2.店舗活動の効率化に向けたチャットボット導入(資生堂)

資生堂ジャパン株式会社は、店頭接客を担うパーソナルビューティーパートナー(PBP)の業務効率化を目的に、生成AIを活用した独自チャットボットを導入しました。PBPが使用する情報検索端末「B-TAB」に組み込まれたこのチャットボットは、商品情報やプロモーション、社内ルールなどを自然言語で検索できます。

従来は営業担当や内勤部門に問い合わせていた情報を自ら検索できるようになり、検索や確認にかかる時間が短縮されました。

この事例は、担当者が必要な情報を自ら検索できる仕組みを整えることで、顧客対応に充てる時間を確保するAI活用事例です。

3-3.生成AIを使った広告の展開(パルコ)

パルコグループは、生成AIを全面的に活用した広告制作に挑戦し、DXをクリエイティブ領域へ広げています。2023年の「HAPPY HOLIDAYS」キャンペーンでは、人物、背景、映像、ナレーション、音楽までを生成AIで制作し、実写撮影を行わない広告を展開しました。

この広告は、生成AIを効率化目的だけでなく、表現の質を高めるために活用した点が評価され、デジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー’23で優秀賞を受賞しています。

この事例は、生成AIを業務効率化だけでなく、新たな広告表現を生み出す手段として活用した事例であり、AI活用がクリエイティブ領域にも広がっていることを示しています。

3-4.AI活用によるサプライチェーンの最適化(イオン)

イオンリテール株式会社では、AIを活用して店舗運営からサプライチェーン全体の最適化を進めています。勤務計画を自動作成する「AIワーク」の導入により、シフト作成時間を約7割削減し、ペーパーレス化も実現しました。

さらに、AIによる需要予測を活用し、商品発注や価格調整の高度化にも取り組んでいます。来店者数や販売数を予測することで、欠品や廃棄の抑制につなげ、将来的には物流や生産領域まで最適化する構想です。

この事例は、AIによる需要予測を商品発注や価格調整に活用し、将来的には物流や生産までつなげることで、個別業務にとどまらないサプライチェーン全体の最適化を目指す取り組みです。また、効率化によって生まれた余力を顧客体験の向上に充てる点も、DXとしての特徴といえます。

4.DXにAIを活用する際の課題・注意点

AIをDXに活用する際は、技術の導入だけでなく、人材やデータ、運用ルールなどの環境整備も必要です。IPAの「DX動向2026」では、企業が抱えるAI導入・運用上の課題についても調査しています。

顧客接点に関する業務のうち、AIを活用している、または具体的に活用を予定している業務

調査結果では、「専門人材が不足している」が50.1%で最も多く、「生成AIの効果やリスクに関する理解が不足している」が45.8%、「適切な利用を管理するためのルールや基準の作成が難しい」が39.7%で続きました。AI活用をDXの成果につなげるには、ツールの選定だけでなく、人材の確保・育成や社内ルールの整備も重要です。

以下では、この調査結果を踏まえ、AI人材と推進体制、データ整備、セキュリティ、AIの出力を利用する際の注意点について詳しく解説します。

4-1.AI人材と推進体制を確保する

IPAの調査では、「専門人材が不足している」と回答した企業が50.1%に達し、AI導入・運用上の課題として最も多く挙げられました。

AIを導入するには、技術に詳しい人材だけでなく、業務上の課題を整理し、AIの活用方法を検討できる人材も必要です。専門知識を持つ担当者だけに任せるのではなく、経営層やIT部門、現場部門が連携できる推進体制を整えましょう。

社内で必要な人材を確保できない場合は、既存社員の育成に加え、外部の専門家や支援サービスを活用する方法もあります。

4-2.社内ルールとガバナンスを整備する

調査では、「適切な利用を管理するためのルールや基準の作成が難しい」が39.7%、「生成AIの効果やリスクに関する理解が不足している」が45.8%となりました。

社内ルールがないままAIの利用が広がると、従業員が機密情報や個人情報を入力したり、AIの出力を十分に確認せず利用したりするおそれがあります。利用できるAIツールや入力してよい情報、出力内容の確認方法、問題が発生した場合の責任者を明確にすることが重要です。

AIの技術やリスクは変化していくため、ルールを作成して終わりにせず、利用状況に応じて定期的に見直しましょう。

4-3.AIに必要なデータを整備する

AIに使用するデータについては、「データの形式や質にばらつきがある」が29.2%、「データが不足している」が26.0%となりました。

AIによる分析や予測の精度は、使用するデータの量や品質に左右されます。データが不足していたり、部門ごとに保存形式や項目が異なっていたりすると、期待する結果を得られない可能性があります。

導入前に、必要なデータがそろっているか、内容に誤りや重複がないかを確認しましょう。複数の部門にデータが分散している場合は、収集・管理方法を統一し、継続的に更新できる仕組みを整えることも必要です。

4-4.情報漏えい・誤回答などのリスクに備える

調査では、「入力した情報が漏えいするリスクがある」が31.0%、「誤った回答を信じて業務に利用してしまう」が28.9%となりました。

生成AIに顧客情報や社内の機密情報を入力すると、利用するサービスや設定によっては情報漏えいにつながる可能性があります。入力を禁止する情報の範囲を決め、法人向けサービスの利用やアクセス権限の設定など、適切な対策を講じることが重要です。

また、AIの回答には、事実と異なる情報や不適切な内容が含まれる場合があります。AIの出力をそのまま顧客対応や意思決定に使用せず、担当者が根拠や正確性を確認する運用を徹底しましょう。

5.DXのためにAI活用を始めるためのステップ

AI活用によるDX推進は、思いつきやただ流行に乗る形で進めても成果にはつながりません。大切なのは、目的を明確にし、段階的に導入と改善を重ねることです。AI活用をDXにつなげるための基本的な流れは、次の5つのステップに整理できます。

顧客接点に関する業務のうち、AIを活用している、または具体的に活用を予定している業務

【STEP1】AIを何のために用いるのか明確にする

まず取り組むべきは、AI導入の目的を明確にすることです。業務効率化、コスト削減、顧客体験の向上など、DXとして実現したい姿を定義し、その中でAIが解決すべき課題を整理します。AI導入そのものが目的になると、投資対効果が見えにくくなるため注意が必要です。

【STEP2】AIによるDX推進体制を整備する

次に、DXとAI活用を推進する体制を整えます。担当部門や責任者を明確にし、IT部門だけでなく現場部門も巻き込みましょう。社内に専門人材が不足している場合は、外部パートナーの活用も現実的な選択肢となります。

【STEP3】AIソリューションを選定する

目的と体制が定まったら、課題に適したAIソリューションを選定します。自社開発かSaaS型か、クラウドかオンプレミスかなどを比較し、コストや拡張性、運用負荷を総合的に判断します。可能であればPoCを実施し、実データで効果を確認することが望ましいです。

【STEP4】スモールステップで導入を進める

AIは一度に全社導入するのではなく、小規模な業務や一部拠点から始めることが大切です。限定範囲で効果検証を行い、現場のフィードバックを反映しながら段階的に適用範囲を広げることで、失敗リスクを抑えられます。

【STEP5】効果を計測して改善を繰り返す

導入後は、KPIを設定し、定量・定性の両面から効果を評価します。AIの精度や業務成果を継続的に確認し、必要に応じてデータやモデルを改善します。AI活用は導入して終わりではなく、改善を繰り返すことでDXの成果を高めていく取り組みです。

スモールスタートと継続的な改善を前提に進めることで、AIはDXを支える実践的な武器となります。

6.まとめ|AIを手段として活用しDXを段階的に進めよう

AIは、業務効率化やデータ分析、顧客対応の改善などを通じて、DXを推進する有効な手段となります。独自調査からも、企業が営業支援やマーケティングなど幅広い顧客接点でAIを活用し、業務負担の削減や顧客体験の向上を目指していることがわかりました。

一方、AI活用をDXの成果につなげるには、人材や推進体制の確保、データの整備、社内ルールの策定、情報漏えいや誤回答への対策が必要です。AIの導入自体を目的にせず、解決したい課題を明確にした上で、小規模な導入から効果検証と改善を重ねましょう。

こうした取り組みを自社だけで進めるのが難しい場合は、AI活用に必要なデータ収集から分析、活用までを一貫して支援するサービスの利用も有効です。顧客接点領域の業務運用に伴走する「CXMO」については、以下で紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。

《調査概要:『顧客接点におけるAI活用』に関する調査》

  • 調査元:SCSK株式会社
  • 調査方法:インターネット調査
  • モニター提供元:サクリサ
  • 調査人数:100人
  • 調査対象:調査回答時に勤務先・自身の事業で顧客接点業務を担当し、AIの導入・試験利用・具体的な導入検討のいずれかに関わっている20〜70歳と回答したモニター