ヘッドレスコマースとは?
仕組みや導入のメリット・デメリットを解説!

ヘッドレスコマースとは

ヘッドレスコマースはECサイトのフロントエンドとバックエンドを切り分け、顧客との接点となるフロントエンド開発をバックエンドに依存せずに行えるようにするアーキテクチャーです。バックエンドに手を加えずフロントエンドの改善や変更を行えるため、顧客体験(CX)をよりよいものにしやすいメリットがあります。

この記事では、ECサイトの販売責任者や小売店の販売責任者の方に向けて、ヘッドレスコマースと従来型ECの違いや仕組み、導入のメリットやデメリットを解説します。ぜひお役立てください。

1.ヘッドレスコマースとは?従来型ECとの違い

ヘッドレスコマースとは、ECサイトのフロントエンドとバックエンドを分離させるという考え方や、分離を実現したECプラットフォームのことです。

なお、ECサイトのフロントエンドとバックエンドには、それぞれ下記の意味合いがあります。

ECサイトのフロントエンドとバックエンド

従来のECサイトはフロントエンドとバックエンドが一体化しており、フロントエンドを変える場合にはバックエンドにも手を加える必要がありました。

ヘッドレスコマースはフロントエンドとバックエンドが分離しているため、バックエンドに依存せずにフロントエンドの開発が行えます。それにより、UI/UXの改善やデザイン変更をスピーディーに行えるようになり、CX向上施策を打ちやすくなります。

1-1.ヘッドレスコマースの仕組み

ヘッドレスコマースは、フロントエンドとバックエンドをAPIで連携させてECサイトを構築します。

ECサイトのフロントエンドとバックエンド

API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)とは、アプリケーションやソフトウェアの機能を、別のアプリケーションなどから呼び出す仕組みです。APIが接続窓口となることで、異なるアプリケーションやソフトウェア同士の連携を可能としています。

ヘッドレスコマースのフロントエンドには、ECサイト、アプリ、SNS、チャットボットといったユーザーとの接点が個別に存在しています。たとえば、ECサイト上で商品・サービスの購入が発生したときには、APIを通して購入データがバックエンドに受け渡される仕組みです。

バックエンドでは受注情報・顧客情報・決済情報などの管理システムがAPIによって統合されていて、受け取ったデータに応じた処理を行います。購入データを受け取った場合は決済会社のAPIを呼び出し、フロントエンドで決済画面を表示させるという流れです。

2.ヘッドレスコマースのメリット

ヘッドレスコマースは従来型ECと比べてサイト開発・運営の柔軟性が高く、利用者のCX向上につながる施策を打ちやすくなるため注目を集めているECシステムの設計手法です。

以下では、CX向上につながるヘッドレスコマースの主なメリットを3つ解説します。

2-1.フロントエンドのUIやデザインを変更しやすい

ヘッドレスコマースはフロントエンドとバックエンドが分離していて、フロントエンドのUIやデザインを変更しやすい点がメリットです。

従来型ECではフロントエンドとバックエンドが密接に関係していて、フロントエンドのみを自由に変更することは困難でした。また、そもそもバックエンド側の制約で希望の変更ができなかったりするケースもありました。

ヘッドレスコマースでは、フロントエンドを変更しても対応するAPIが正しく接続してくれるため、バックエンド側に影響が及びません。フロントエンド側の変更を自由にでき、デザインやUIのA/Bテストや、ブランドごとに異なるデザインのECサイト実装を素早く行えます。

2-2.さまざまなチャネルに対応した顧客接点を効率的に追加できる

ヘッドレスコマースでは大がかりなシステム変更をせずに、ブラウザ以外のモバイルアプリやSNS、ウェアラブルデバイス、デジタルサイネージ、チャットボットなど、さまざまなチャネルにECの機能を持たせることができる点もメリットです。

バックエンドシステムには手を加えずに顧客接点を増やすことができるのは、フロントエンド開発を柔軟に行えるヘッドレスコマースならではの強みです。チャネルが幅広く展開されたとしても、購入データなどはバックエンドに送信されて一元管理できます。

ヘッドレスコマースによって多チャネル化が実現すると、顧客はさまざまなタッチポイントから商品を購入できるようになり、ECの集客力がアップし、コンバージョン率も向上すると考えられます。

2-3.OMOやオムニチャネル化に対応しやすい

フロントエンドを変更しやすいヘッドレスコマースは、OMOやオムニチャネル化に対応しやすいメリットもあります。

ECサイトがOMOやオムニチャネル化を目指すには、それぞれの手法を実現できるコンテンツをフロントエンドに用意しなければなりません。たとえば、実店舗への来店予約や商品の取り置き依頼がECサイト上でできる機能や、実店舗で欠品している商品があった際にEC在庫を店舗で販売できる仕組みなどが必要となるでしょう。

ヘッドレスコマースはバックエンドのシステムに手を加えず、APIの活用によって必要なコンテンツを追加できます。幅広いチャネルに対応する場合も、顧客データや購入データなどはAPIを通してバックエンドに受け渡されるため、データの一元管理が可能です。

OMOやオムニチャネルについては以下で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

AOKIのEC推進キーマンが語る「店舗とECの長所を最大化するOMO施策」

2-4.ECサイトの開発や改善を効率化できる

ヘッドレスコマースはエンジニアの分業化や外注利用を促進し、ECサイトの開発や改善を効率化できます。

従来型ECのシステム開発を自社で行う場合、開発を担当するエンジニアはフロントエンド・バックエンドの両方を担当しなければなりません。特に受発注管理・顧客管理・決済管理などを行うバックエンド側は作業が多く、エンジニアはフロントエンド側の開発・保守に十分な時間をかけられないケースがあります。

ヘッドレスコマースはフロントエンドとバックエンドが分離しているため、エンジニアが分業して開発作業を行うことが可能です。バックエンド開発・保守の外注もできるため、エンジニアがフロントエンド開発に専念できる開発体制を作れます。

3.ヘッドレスコマースのデメリット

ヘッドレスコマースには多くのメリットがあるものの、従来型ECと比較するといくつかのデメリットもあります。ECサイトに課題を抱えている方は、ヘッドレスコマースのデメリットも知った上で導入するかどうかを決めましょう。

ヘッドレスコマースのデメリットを2つ紹介します。

3-1.開発コストが高くなる

ヘッドレスコマースは従来型ECよりもシステム構造が複雑であるため、開発コストが高くなります。

既存のECサイトにヘッドレスコマースを導入する際は、まずフロントエンドとバックエンドを分離させて、API連携ができるように開発しなければなりません。特にバックエンドの仕組みは大きく変更しなければならず、開発に多くの時間と費用がかかります。

開発後にはサイト運用が問題なく行えるかの検証・改修作業も必要です。開発工数が多く、ヘッドレスコマースで狙った効果を出せるようになるには長い期間がかかる可能性があります。

3-2.APIに関する専門知識が必要になる

ヘッドレスコマースによるECサイト構築では、APIに関する専門知識が必要になります。開発を担当するエンジニアがAPIの知識や開発技術を備えていなければならず、内製化が難しい点がデメリットです。

APIに詳しいエンジニアが社内にいない場合は、人材の育成もしくは外部への依頼をしなければヘッドレスコマースを実現できません。時間や費用といったコストが発生し、ヘッドレスコマース導入にかかる負担が増える可能性があります。

また、さまざまなベンダーが提供しているサービスでは、新しいAPIが日々登場しています。ヘッドレスコマースの開発をするエンジニアには、新しいAPIについての情報収集や比較検討ができる知見も必要です。

4.ヘッドレスコマースが向いているビジネス

ヘッドレスコマースは、下記のような特徴があるビジネスに向いています。

・サイトのUIやデザインが、売上に大きく関係している

・多くのECサイトや販売チャネルを展開している

・ユーザーニーズを把握しやすい業種である

たとえば、ファーストインプレッションが重要なコスメ事業はヘッドレスコマースに向いているビジネスです。ユーザーの反響やトレンドに合わせてWebサイトのデザインなどを切り替えることで、売上向上が目指せます。

また、複数のブランドを展開するアパレル事業もヘッドレスコマースに向いています。フロントエンドはブランドごとのECサイトを用意しながらも、バックエンドは一元的なデータ処理ができるため、ユーザーニーズへの対応と業務負担の軽減が実現可能です。OMO成功に向けた「在庫統合」と「顧客統合」の具体的な事例について以下で紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。

5.まとめ

ヘッドレスコマースに対応したECサイトを導入すれば、開発や改善がより容易になり、フロントエンドのUIやデザインをバックエンドに影響することなく変更できます。くわえて、チャットボットやモバイルオーダーなどのコンテンツをフロントエンドに導入しやすくなり、OMOやオムニチャネル化につながる点もメリットです。

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