クラスター分析とは?
メリットや分析手法・活用例を体系的に解説!

顧客の購買行動やアンケート結果など、さまざまなデータからパターンを見つけ出すために有効なのが「クラスター分析」です。分類の基準をあらかじめ設定せずに、データの共通点を基に自動でグループ分けを行える点が特徴で、マーケティング施策の立案や商品開発にも広く活用されています。
この記事では、初めてクラスター分析を行う方に向けて、クラスター分析のメリットから基本的な手法、手順、活用例まで解説します。ぜひお役立てください。
1.クラスター分析とは
クラスター分析とは、複数のデータを共通点に基づいてグループ(クラスター)に分類する分析手法です。マーケティングやアンケート調査、顧客分析などの分野で活用されており、属性や行動パターンが似た人々を同じグループとして捉えることで、より効果的な施策や戦略を立てることが可能になります。
たとえば、商品購入データに基づいて顧客を「価格重視」「ブランド志向」「新商品好き」などに分類すれば、グループごとの傾向を把握しやすくなります。あらかじめ分類基準を設ける必要がないため、探索的なデータ分析にも適しています。
データ分析は客観的な根拠に基づいて意思決定を行う上で不可欠です。データ分析のやり方や進め方については以下の記事でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
1-1.クラスター分析のメリット
クラスター分析には、他の手法では得られない多くの利点があります。代表的なメリットを以下に紹介します。
隠れたパターンを発見できる
クラスター分析では、あらかじめ分類基準を設定する必要がないため、データに潜む見えにくい傾向や共通点を自動的に浮き彫りにできます。浮き彫りにすることで、人間の直感や固定観念に左右されない客観的な洞察を得られます。
ターゲティングや戦略立案に役立つ
顧客の購買傾向やライフスタイルを基に自然なグループを形成できるため、広告配信や商品開発において、セグメントごとのニーズに対応した施策を打ち出しやすくなります。
多様な手法により柔軟に対応できる
ウォード法やk-means法など、目的やデータの性質に応じて分析手法を選べるため、マーケティング、医療、教育などさまざまな分野での応用が可能です。
データ処理の効率化が可能
データをグルーピングすることで、全体の傾向が把握しやすくなり、分析や意思決定のスピードが向上します。たとえば、テストマーケティングのターゲット選定なども効率よく行えます。
2.クラスター分析の2つの手法
クラスター分析には、大きく分けて「階層的クラスター分析」と「非階層的クラスター分析」の2種類があります。どちらもデータを類似性に基づいてグループ化する手法ですが、手順や得意とする用途が異なります。
以下では、それぞれの特徴と違いについて解説します。
2-1.階層的クラスター分析
階層的クラスター分析は、データ同士の距離(類似度)を基に、最も近いデータから順にグループ化していく手法です。あらかじめクラスターの数を決める必要がなく、自然な分類の流れを可視化できるのが大きな特徴です。
階層的クラスター分析では、分類の経緯を「樹形図(デンドログラム)」として出力でき、どのデータ同士がどのような順番で結びついたかを直感的に理解することが可能です。主にウォード法や単連結法、群平均法といった結合法が使われ、分析目的やデータの構造に応じて適切な方法を選択できます。
手軽に始められる一方で、データ量が多いと計算コストが大きくなる点はデメリットと言えるでしょう。大規模データには不向きな場合もあるため、非階層的手法との使い分けが重要です。クラスター数が未定で、構造の可視化を重視したいときに有効な分析方法です。
2-2.非階層的クラスター分析
非階層的クラスター分析は、あらかじめ設定したクラスター数に基づいてデータを分類する手法です。大量のデータを効率的にグルーピングできるため、ビッグデータ解析やマーケティング分野などで幅広く利用されています。階層的クラスター分析と異なり、あらかじめ分類数を決定することで計算処理が比較的軽く、スピーディーに分析結果を得られるのが特徴です。
非階層的クラスター分析は、クラスター数が明確な場合や、サンプル数が多いデータを高速かつ安定的に分類したい場面に適しています。
3.クラスター分析のやり方
クラスター分析は、以下のような手順を踏むことで、データの類似性に基づいてグループ分けを行えます。目的に応じた準備と手法の選定が、分析の精度を左右する重要なポイントです。クラスター分析の基本的な流れについて、順を追って紹介します。
3-1.分析の種類を選ぶ
クラスター分析を進めるにあたっては、階層的クラスター分析か非階層的クラスター分析か、最初に適切な分析の種類を選ぶことが必要です。どの特徴を基に分類したいのか、分析結果をどう活用したいのかによって、選ぶべき手法も変わってきます。
データ量や構造の複雑さ、分類数の有無、分析の柔軟性や処理速度などを判断材料として、最終的な目的や分析環境に合った方法を選定すれば、実用的な分析結果を得られます。
3-2.類似度の定義を決める
分析の種類が決まったら、「どのデータ同士が似ているか」を判断するための指標である類似度を定義しましょう。類似度の定義はデータ間の距離を数値で測定することによって行われるため、対象の特徴や目的に応じて適切な手法を選ぶことが大切です。
主な距離の測定方法は以下の通りです。
ユークリッド距離
平面上の2点間の直線距離です。クラスター分析の中でも最も一般的に使われる距離です。身長・体重など、連続量のデータが多いときには特に使われます。
マンハッタン距離
市街地のような碁盤の目状の移動を想定した距離で、縦横方向の合計距離で算出します。各座標の差の絶対値を合計するため、外れ値にやや強く、売上・アクセス数など変動が大きいデータ分析に向きます。
チェビシェフ距離
各次元の差のうち最大値を距離とする方法で、最大の変化に着目する場面に向いています。
ミンコフスキー距離
マンハッタン距離とユークリッド距離を組み合わせた距離です。1つのパラメータ(p)を変えるだけで、双方の距離をまとめて表現できるため、目的に合わせて柔軟に調整が効く点がメリットです。

上記のような類似度指標を適切に選ぶことで、分析結果の精度と有用性が大きく変わるため、慎重な判断が求められます。
3-3.分析手法を選ぶ
続いて、類似度の計算方法を踏まえて、どのようにクラスターを形成するかを決めます。使用するクラスター分析の種類によって、選択できる手法も異なります。
階層的クラスター分析
ウォード法
クラスター内の分散が最小になるよう統合します。均質なクラスターを形成したいときに有効です。
最短距離法(最近隣法)
最も近い2点間の距離でクラスターを形成します。クラスター間の最も強い類似性を重視する場合に使われています。
最長距離法(最遠隣法)
2クラスター間の最も遠い距離を基準にグループ化します。最長距離を見るためクラスターが重なりにくく、各クラスターの境界をはっきりさせたい場合に使われています。
群平均法
クラスター内すべての点の平均距離で類似度を測定します。クラスター間の関係を平均的な視点から捉えたい場合に使われています。
重心法、メディアン法など
各クラスターの重心や中央値を用いて分類します。クラスターの全体的な位置関係を考慮する場合や外れ値の影響を最小限に抑えたい場合に使われています。
非階層的クラスター分析
k-means法
初期の重心に基づき、各データを最も近いグループに割り当て、グループごとに平均を再計算する手法です。これを繰り返して分類を洗練します。計算が速く、広く使われています。
k-medoids法
重心ではなく実データ点(メドイド)を中心に用いる手法です。外れ値の影響を相対的に抑えられるため、結果が安定しやすいと評価されています。
分析の目的や扱うデータの特性に応じて、適切なものを選択しましょう。
3-4.クラスターの形成方法を決める
分析手法が決まったら、実際にクラスターを形成します。あらかじめグループ数を決めている場合は、それに沿ってデータを分けます。階層的分析の場合は、デンドログラムを見ながら最適なクラスター数を判断しましょう。
形成されたクラスターごとに共通点や傾向を読み取り、必要に応じて名称付けやラベリングを行うことで、実務で活用できるセグメント情報として整理します。
4.クラスター分析のデメリット・注意点
クラスター分析には以下のような注意点があります。
他の手法との併用が必要
クラスター分析は「似ているデータのまとまり」を可視化する手法であって、変数間の因果関係や寄与度を直接検証するものではありません。効果測定や因果推論を行う場合は、回帰分析などの異なる分析手法と組み合わせる必要があります。
主観の影響を受けやすい
クラスター分析では、「どのようにグループを決めるか、グループ数はいくつか」を分析者が設定します。カテゴリが変わると結果も変わるため、客観的な指標を使って複数人でレビューする体制を整えることが大切です。
距離の定義によって結果が変わる
ユークリッド距離、マンハッタン距離など、どの距離尺度を使うのか、また、データの標準化ができているかどうかで分類結果が変わります。
結果の解釈が必要
クラスター分析はあくまでも番号付きのクラスターを作る分析で、各集団の特徴を解釈しないと施策に活用できません。各クラスターの主な変数をグラフ化し、ペルソナや特徴などのラベルを付けて共有しましょう。
5.クラスター分析の活用例
クラスター分析は、顧客の行動や価値観を基にグループ化し、商品企画や販売戦略に活用できる手法です。たとえば、アパレルショップで「セーター」「薄手のコート」を購入する層をクラスター化すると、「季節感を重視しつつ、価格は控えめ」という傾向が分かったとします。
また、同じアパレルショップで、「汚れが気になる」「洗濯しやすい」「持ち運びやすい」といった回答が同じクラスターに集まる場合、そのクラスターに属する消費者が清潔性や扱いやすさを重視しているといった価値観が見えてきます。これは属性情報だけでは読み取れないニーズであり、新たな商品開発につながる重要なヒントです。
6.まとめ
クラスター分析は、膨大なデータの中から共通点を基にグループを作り出し、顧客理解や施策立案に役立てる分析手法です。階層的クラスター分析・非階層的クラスター分析といった手法の選定や類似度の定義、距離測定方法などによって結果が変わるため、目的に合った設計が重要です。マーケティングから商品開発まで応用範囲が広く、データ活用を一歩進めたい企業にとって心強い手段となります。
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