ECのカスタマージャーニーを設計・構築する方法は?
手順やコツを解説!

ECのカスタマージャーニーを設計・構築する方法は

ECサイト運営において、顧客の購買行動を理解し、各接点での体験を最適化することが売上向上の鍵です。ただし、現代の消費者は多様なタッチポイントを経由するため、複雑な顧客行動を体系的に把握する必要があります。カスタマージャーニーは、顧客が商品認知から購入、評価に至るまでの体験プロセスを可視化する重要なマーケティング手法です。

この記事では、ECサイトの売上向上を目指す方へ向けて、カスタマージャーニーの構築手順とペルソナ設計、カスタマージャーニーマップの作成から施策反映までの実践的な方法について解説しております。ぜひお役立てください。

1.カスタマージャーニーとは

カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを認知してから購入、利用、その後の評価に至るまでの一連の体験プロセスを「旅」にたとえて表現したマーケティング概念です。

ECサイトにおいては、顧客がオンライン上で商品を発見する瞬間から購入完了まで、さらには購入後の体験まで、すべての接点が重要な意味を持ちます。たとえば、検索エンジンやSNSを通じた商品の発見、ECサイトでの商品閲覧、購入手続き、配送体験、商品利用、レビュー投稿といった各段階が、顧客の旅路を構成しています。

現代の消費者の行動は複雑化しており、単一のルートではなく多様なタッチポイントを経由してECサイトにたどり着きます。企業はこの複雑化した顧客体験を理解し、各接点での満足度を向上させることで、顧客の購買意欲を高め、長期的な関係構築を図ることができます。カスタマージャーニーの理解は、効果的なECサイト運営において欠かせない要素となっています。

カスタマージャーニーについては以下の記事でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

2.ECサイトにおけるカスタマージャーニーの構築手順

ECサイトのカスタマージャーニーを構築する際は、以下の3つの手順で段階的に進めることが効果的です。

ECサイトのカスタマージャーニーを構築する際の3つの手順(「ペルソナを設計する」→「カスタマージャーニーマップを作成する」→「分析した課題を施策に反映する」)

これらの手順を順序立てて実行することで、顧客の視点に基づいた効果的なECサイト運営が可能になります。各ステップでは前段階の成果を活用しながら進めることで、一貫性のある顧客体験の設計と具体的な改善施策の立案が実現できます。

3.ECサイトにおけるペルソナ設計のポイント

カスタマージャーニーにおけるペルソナ設計とは、ターゲットとして想定している顧客の人物像を作りこみ、ユーザー行動のシミュレーションに活用するプロセスです。

ECサイトでは年齢や性別だけでなく、ライフスタイルや購買行動、デジタルデバイスの利用状況なども含む多面的なペルソナが必要。ペルソナ設計に失敗すると、実際の顧客ニーズとかけ離れた施策となり、コンバージョン率の低下を招く恐れがあります。

以下では、効果的なペルソナ設計のポイントを紹介します。

3-1.客観的なデータからペルソナを設計する

ペルソナの設計では、主観や思い込みに頼らず、客観的なデータに基づいて顧客像を明確にすることが重要です。まず、既存顧客へのアンケートやインタビューを通じて、基本属性や行動パターン、課題意識などを調査します。その際、アクセス解析や問い合わせ履歴といった定量・定性データを併用すると、実態に即した情報が得られます。

得られたデータを基に、年齢・性別・職業などの属性を分類し、価値観やニーズも含めて詳細な人物像として構築します。また、現場や経営層の視点も反映することで、社内で共有しやすいリアリティのあるペルソナ設計が可能となります。

3-2.具体性の高いペルソナを複数人分作成する

ペルソナは、多数存在するユーザーの中の代表例として設計するものであり、すべての顧客行動を集約した「唯一の答え」ではありません。したがって、1人だけでなく複数のペルソナを作成することで、より多様な顧客のニーズや行動パターンに対応しやすくなります。特に異なる属性や課題を持つユーザー像を並行して把握することで、施策の方向性に幅が生まれ、柔軟な戦略立案が可能となります。

ただし、ペルソナを多く作りすぎると判断が複雑化し、かえって意思決定のスピードが落ちるおそれがあります。初期段階では2人程度の具体性の高いペルソナから設計し、必要に応じて調整・追加するのが現実的です。

4.ECサイトにおけるカスタマージャーニーマップの作成方法

カスタマージャーニーマップを使い、現在のマーケティング施策やユーザー対応の流れを可視化すれば、見落としていた課題や改善点が明らかになります。特にECサイトのようにユーザー接点が多岐にわたるサービスでは、顧客の行動・感情・課題をフェーズごとに整理することで、施策の優先順位や有効なKPIを定めやすくなります。

以下では、ECサイトのカスタマージャーニーマップを作成するための具体的なステップを紹介します。

ECサイトのカスタマージャーニーマップを作成するための具体的なステップ

4-1.カスタマージャーニーのゴールを決める

カスタマージャーニーを作成する際には、まずユーザーにどのような行動をとってほしいかという最終ゴールを明確に定める必要があります。ECサイトの場合、「商品購入」「カート投入」「会員登録」「メルマガ登録」などが代表的なゴールにあたります。

これらのゴールは、ECサイトの事業目的や商品特性によって適切に選定する必要があります。たとえば、高単価商品の場合はすぐに購入されにくいため、「商品ページの閲覧完了」や「お気に入り登録」など、段階的なゴール設定も効果的です。

ゴールを設定することで、カスタマージャーニー全体の設計に一貫性が生まれ、施策の方向性もぶれにくくなります。社内関係者ともゴールを共有し、認識をそろえておくことで、後のフェーズでもスムーズな連携が可能です。

4-2.ユーザー行動に合わせてフェーズを決める

ゴールを決めたら、ユーザーがそこに至るまでの行動をいくつかのフェーズに分けて可視化します。BtoCのECサイトでは、「認知」「興味・関心」「比較・検討」「購入」「購入後フォロー」といった流れが一般的です。

たとえば、「認知フェーズ」ではSNS広告や検索流入が中心となり、「比較・検討フェーズ」ではレビューや商品比較が重視されます。「購入後フォロー」ではリピート促進やレビュー依頼など、顧客との関係強化が課題となります。

フェーズを明確に分けることで、それぞれの段階における施策や課題が浮き彫りになり、改善の優先順位をつけやすくなります。また、フェーズの区切り方は商材やターゲットによって柔軟に調整することが可能です。

4-3.ユーザー行動に基づく思考や感情を定める

ユーザーは各フェーズで何らかの思考や感情を伴って行動しています。「比較・検討フェーズ」では「この商品は本当に自分に合っているか」「もっと安く買える場所はないか」といった不安や迷いを抱えることが多い傾向です。

こうした心理的な変化をマップ上に記載することで、ユーザーの視点に立ったコンテンツ改善が可能になります。たとえば、不安を解消するレビュー表示や、購入を後押しするキャンペーン情報の設置などが考えられます。

実際のユーザーの声を拾うために、カスタマーサポートへの問い合わせ内容やレビュー、SNSでの言及内容を参考にすることが効果的です。感情や思考を理解することが、ユーザー体験の質を高める第一歩です。

4-4.フェーズごとの課題を分析・KPIを設定する

各フェーズにおけるユーザー行動や感情を整理した後は、現状の課題を洗い出し、施策の目標となるKPIを設定します。たとえば、「比較・検討フェーズ」で商品ページからの離脱率が高ければ、情報量の不足やデザインの問題が疑われます。

商品ページからの離脱率が高いといった課題に対しては、「商品画像の改善」や「レビュー件数の増加」など、具体的な改善策を実行し、PV数や回遊率、購入率といったKPIで進捗を管理します。

KPIは施策の効果を測定し、次の改善につなげるための重要な指標です。改善活動を継続的に行っていくためにも、KPIは過剰に複雑なものではなく、実行可能かつ測定しやすいものを設定することが大切です。適切なKPIの設定によって、効果検証と改善のサイクルを無理なく回し続けることが可能になります。

5.カスタマージャーニーを施策に反映するコツ

カスタマージャーニーマップは、作成して終わりではなく、具体的な施策に反映して初めて価値を発揮します。ECサイトの運営では、売上や利益などのKGIを設定し、CVRやCPOといったKPIを用いて施策の効果を測るのが一般的です。

マップを活用することで、ユーザーの感情や行動に応じた施策が見えやすくなり、SNS投稿の反応数など、数値からは読みとれない重要な指標も発見できます。こうした指標をKPIとして社内共有すれば、チーム全体で顧客体験を向上させるための一貫した行動がとりやすくなります。

また、高級志向の商品であれば、梱包や配送時の印象も重要です。ブランドの一貫性を損なわないよう、外注先との連携も含めて施策の実行体制を整えることが求められます。定期的なマップの見直しも忘れずに行いましょう。

6.まとめ

カスタマージャーニーは、顧客が商品認知から購入・評価に至る体験プロセスを表現したマーケティング概念です。ECサイトにおけるカスタマージャーニーでは、顧客がオンライン上での商品を発見してから購入、さらに購入後の体験まで、すべての接点がこの「旅」の重要な構成要素となります。

構築は、ペルソナ設計、マップ作成、施策反映の3段階で進めます。客観的なデータに基づいたペルソナを作成し、ゴール設定やフェーズ分けを行ってマップを作成します。最終的にマップを具体的な施策に反映し、定期的に見直すことで顧客体験の改善と売上向上を実現できます。

カスタマージャーニーの構築や施策の実行には、専門的な知見と高度なデータ分析力が欠かせません。altcircleでは、マーケティング施策の立案から実行までを支援する「伴走型マーケティング運用」と、データに基づいた意思決定を後押しする「データ分析・活用コンサルティング」の両面から、お客様の課題解決をサポートします。

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